レデラー来日、ローンチイベントとプレゼンテーションの様子をレポート

 By : CC Fan

ジュネーブ・ヌーシャテル
から1週間、レデラー夫妻が日本でのローンチと納品のために来日しました。
WMOでも密着取材を行ったので順次レポートしていきます。

まずは、メディア向けに大々的に行われたローンチとレデラーについてのプレゼンテーションの様子をレポートします。



最前列を確保、今年で時計師として40周年を迎えるベルナルド・レデラー、その年の相応しい新展開としています。



ジュネーブでも配られていた「コーヒー豆」、エスケープメントシリーズの「次の章」の「ヒント」とのことで、コーヒー豆の重さが「ある部品」と同じ重さである、という事のようです。
コーヒーもこの豆で淹れられたそうで、かなり濃厚でした。



イシダ代表の石田 充孝氏より今回に至った経緯が説明されます。
機械式時計の心臓とも言える「脱進機」そのものに取り組める時計師は独立時計師の中でも一握りであり、その中でも最高峰のキャリアを持つレデラーを是非扱いたいと交渉を重ねてきました。
スイスのワークショップで熱心に話し込んだ結果、危うく帰りの電車をミスしそうになったり、航海における時間情報の重要性を語られたり…と意気投合していった結果、リテーラーとして正式に契約を締結し、取り扱っていくことが決まりまったそうです。

今回持ち込まれたものは「サンプル」という扱いのためレデラー夫婦と共にスイスに帰ってしまいますが、年末にかけて実機も入荷予定、「見る機会」も増えそうです。



ベルナルド・レデラー登場!



直前に行われたジュネーブウォッチデイズの情報も。
レデラーは主要メンバーとして初期から参加してきたとのこと。



「トークショー」形式で40年の時計師人生を振り返ります。





若き日のロン毛のベルナルド、初めてのワークショップをオープンさせ、クロックの制作を手掛けます。
独立時計師アカデミー(AHCI)には創業者2名に次ぐ3人目のメンバーとして入会、途中で脱退することもなくずっとメンバーとして参加しています。



2006年にBLU(ベルナルド・レデラー・ユニバース)を立ち上げ、日本でも反響が大きくこの時に来日したそうです、写真は3つの異なる回転速度を持つケージが時分秒を直接表現するオービタル・トゥールビヨンです。

2011年にはソ連(当時)のユーリ・ガガーリンによる宇宙初飛行50周年(1961年4月12日に初飛行)を祝うガガーリン・トゥールビヨンの制作を行います。
これはガガーリンの宇宙飛行が108分だったことに因み、文字盤上のトゥールビヨン(ボストーク宇宙船)が108分で地球が描かれた文字盤を一周する、という象徴的な作品で、各部の意匠も社会主義的なアイコンが組み合わされています。

2016年にはドイツ海軍に向けた10万ガウスに耐える耐磁ムーブメントの開発で、現在の基準で見てもトップクラスの耐磁性能を実現しました。

そして2020年ごろから師と仰ぐジョージ・ダニエルズの両方向独立脱進機を小型化し腕時計に載せるためのプロジェクトをスタート、CIC(セントラルインパルスクロノメータ)脱進機と名付け、ダニエルズの利点を活かしたまま欠点を補うための研究を進めていきます。



CICを完成させ、複数回のGPHG受賞、高級時計財団FHHにも所属します。



レデラーを象徴する5つの要素。

時計である以上、精度をきちんと担保する純粋なクロノメトリーの追及。
原理原則まで立ち返って考え時計づくりの根本を再定義。
コア技術を他社に依存しない独立したクラフトマンシップ。
装飾のための装飾ではなく、美は機能から生まれる。
そして次世代を育て、ノウハウを育み継承する。



特に重要なのは時計づくりの根本を再定義ではないでしょうか。



18世紀、ブレゲが用いていたナチュラル脱進機はデテント脱進機の危険性の根本であった停止状態が1状態しかないという問題を解決するためにレバーを左右に振って2つの停止状態を作り出しました、これによりデテントの停止が間に合わずガンギが複数歯分進んでしまう問題や衝撃で停止が解除されてしまう問題は解決しました。
しかし、1輪列で動かすために1:1の反転車を必要とし、当時の技術では軽く作ることもできずロスが大きくてパワーリザーブが極めて短い問題を解決できませんでした。

20世紀に入り、ジョージ・ダニエルズがブレゲの設計を再解釈、2つの輪列から逆回転のエネルギーを与えることで問題があった1:1の反転車を無くし効率を向上させ、振り石にアンクル脱進機のダブルローラー安全装置を「接ぎ木」することで安全にしました。
しかし、懐中時計サイズでは動作したものの、(当時の)腕時計サイズでは部品精度の問題で動作させることができず、腕時計にはよりコンパクトで1輪列で動作するコーアクシャル脱進機で取り組むことになります。

そしてレデラーのCICはダニエルズの設計の核である2輪列を踏襲したまま、インパルスの抜けを防ぐ「ウェイティングパレット(待機用爪石)」と名付けた機構で低振幅時にも着実に振り石にガンギの歯が当たるようにしました。



ダニエルズの2輪列設計はほとんど引き継がれておらず、レデラーの他にはイギリスのフロッシャムぐらいです。
他の「ナチュラル脱進機」はブレゲ同様反転車を抱えたままであり、それを素材の改善で動かしているが、根本的には同じ問題を抱えている、根本から考え直していない、というのがCICとの違い、と理解しました。

より最適化するためにアンクルから「メトロノーム」と呼ぶレバー部品に変更、極限まで停止と解除にかかる角度を小さくしました。
一部間接駆動を併用するため、デテントとは違い巻き上げだけで(輪列トルクだけで)自己起動するそうです。



「プロトタイプ」からルモントワールの改善を経て完成したCIC44、ルモントワールを根本から再設計して小型化したCIC39…と研究の成果が。



ルモの進化はこの記事をご覧ください。



GPHGにも複数回入賞、2021年にはイノベーション賞、2024年にはクロノメーター賞、そして今年2026年もファイナリストに残っています。



というわけでローンチイベントとプレゼンテーションが終了。
私が書くとどうしても脱進機とか機構のことになりますね…



時計も、この日にパシャパシャ撮っていた写真を共有してほしい、と言われたので渡したらどうやら公式リリースに使ったみたいです…



新作「アインシュタイン・プロブレム」。



個人的には44mmのサイズ感も好きですネ…

この日は比較的「温厚」な話だったのですが…





日を改めて少人数インタビュー!
こちらはかなり「過激」だったためどういう風に書き下すか改めて考えています…